麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年08月25日(木)
錯誤のために盛り込まれた罠の大胆さにも驚かされるが、それをロジカルに解き明かすフェイの推理が実に秀逸。またメインの物語の方もようやくチーム名が決まり、いよいよ核心に迫りつつある展開で早くも次巻が待ち遠しい。
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「神樹の実バスケット」はルール説明の段階である程度作者の狙いが読めてしまうものの、それでも動きのあるシーンは読み応えがあるしその中に張られた細やかな伏線は好印象。一方「そしてみんないなくなった」は主人公視点にしたことで読者を翻弄させつつ、仕掛けに説得力を与えることに成功している。
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神々が考案した様々なゲームに挑むファンタジー頭脳戦シリーズの五作目。今回はあとがきで作者が語っている通り2巻以来久々の「一巻二ゲーム」構成となっており、「神樹の実バスケット」と「そしてみんないなくなった」の、タイプの違う二つのゲームで楽しませてくれる。
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細音啓「神は遊戯に飢えている。5」読了。不可能と思われた迷宮を完全攻略したことで正体不明の神から目をつけられてしまうフェイの前に新たに立ちはだかるのは世界樹が舞台の特殊ルールバスケ「神樹の実バスケット」と海神ポセイドン考案の迷宮脱出&偽者当て「そしてみんないなくなった」だった。
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2022年08月24日(水)
それでいて消失の謎が解かれた後にくるサプライズはなかなかのもので、伏線回収の巧さもさることながら、大人たちが気付かない子供たちの繊細な感情や心理をさりげなく解き明かしてみせる手腕には脱帽と言わざるを得ない。本作は子供たちの視点で丁寧に紡がれたジュブナイル本格ミステリの傑作である。
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これは良いジュブナイルミステリ。事件の真相こそ他愛ないものながら、本作の見所はそれを示唆する丁寧かつ細やかな伏線とミステリファンの心を擽る八つの仮説をベースにした推理、そして何より自閉スペクトラム症の少年がどうやって真相を突き止めるか、その過程が極めて自然に描かれている点だろう。
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シヴォーン・ダウド「ロンドン・アイの謎」読了。ロンドン・アイと呼ばれる巨大な観覧車に乗り込んだ従兄弟のサリムが12歳のテッドと姉のカットが見ていたにも拘わらず忽然と姿を消してしまった。不可解な人間消失の謎に「ほかの人とはちがう」優秀な頭脳を持つ少年テッドが挑む。
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加えてそのドラマ性に一役買っているのが事件を追う台北南署の刑事・李山海の設定であり、この探偵役だからこそ際立つ犯人との対決シーンが実に秀逸。あくまで野球はドラマを盛り上げる要素の一つにすぎず決して派手な作品ではないものの、静かな人間ドラマがじわじわと胸に沁みる滋味深い良作である。
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また本作は昭和本格らしく(?)時刻表を駆使したアリバイ崩しを扱っているが、そのトリック自体はそこまで目新しいものではない。むしろ本作最大の見所は動機の方であり、日本統治下の台湾という舞台ならではのそれはたとえ真相が途中で分かってしまったとしても一気に読ませるドラマ性がある。
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第6回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。島田荘司賞の受賞作というと島田荘司が提唱する21世紀本格を彷彿とさせる作品が多いが本作はというと意外にもその対極とも言える昭和本格要素が強く、登場人物に日本人が多いせいもあって読んでいて全く翻訳ミステリらしさが感じられないのにも驚かされる。
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唐嘉邦「台北野球倶楽部の殺人」読了。昭和十三年、日本統治下の台湾・台北市。野球愛好家の集まり「球見会」の会員二人が別々の列車内で不審な死を遂げた。やがて容疑者が浮かび上がるも、鉄壁のアリバイが捜査陣の前に立ち塞がる。果たして二人の死にはエースのスカウト合戦が関係しているのか?
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2022年08月23日(火)
だがその一方でミステリとしてみると謎解きは良くも悪くもイージーで犯人の動機もありきたりなもので終わってしまっているのが残念。目新しさを求めると物足りなさは否めないが、この手の終末世界を舞台にした物語が好きな人であれば楽しめる作品である。
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第68回江戸川乱歩賞受賞作。終末世界で起きた殺人事件の謎を扱った本作は教習所の日常風景が静かに崩れていく冒頭から掴みはバッチリ、探偵役であるイサガワを始めとするキャラや終末世界ならではのドラマの見せ方は○で、終始テンポのいい展開でぐいぐいと読ませてくれる。
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荒木あかね「此の世の果ての殺人」読了。小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表された終末世界。一人太宰府で自動車の教習を受け続けている小春は年末のある日、教習車のトランクの中から滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワと共に彼女は地球最後の謎解きを始める。
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2022年08月22日(月)
だがその反面サプライズを重視しすぎたためかどうとでもとれる伏線ばかりで、真相そのものを示唆する決定的な伏線に欠けるのが難。また密室殺人の真相も何とかその後の大仕掛けと繋げてはいるものの、それでも定番のネタの域を出ていないし、どうしても状況の不自然さを感じてしまう。
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目の前に亡くなった大切な人と瓜二つの人物が現れる謎と密室殺人を扱った長編ミステリ。本作の帯には「《世界の色》が豹変する驚愕ミステリ」とあるが、確かにこの真相に関してはある小道具や昨今の社会事情を巧くミスディレクションに活かしたおかげで驚く人もいることだろう。
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市川憂人「灰かぶりの夕海」読了。波多野千真の前に現れた少女は二年前に死んだ恋人と同じ姿、同じ《夕海》という名前だった。更に仕事中に遭遇した殺人事件――密室の中で死んでいたのは恩師の亡き妻とそっくりな女性だった。彼女たちの正体は? そして、この世界では何が起きているのか?
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2022年08月10日(水)
巧くミスディレクションしつつ最後にサプライズを用意する手腕から、かつて「失恋探偵ももせ」シリーズで見せていた作者のミステリセンスが窺えて嬉しくなると共に、全8巻にわたる不思議な三角関係恋物語にこれ以上ない綺麗な着地を見せてくれた作者に対し惜しみない拍手を送りたい。
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そして迎える選択の時――。ちなみに本作に対する唯一の不満は二重人格になった理由が結局最後まで具体的に明かされなかった点だが、これに関してはあくまで恋愛主軸で描きたかったというのもあるかもしれないが、それ以上に最後の選択のサプライズを成立させるためには致し方ないところだったのだろう。
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二重人格の少女と僕の恋愛模様を描いたシリーズの完結編。いよいよ始まった「秋玻」と「春珂」の人格統合へのカウントダウン。残り少ない時間の中、それでも何とか二人との触れ合いを大切にしつつ、どちらを選ぶべきか必死に考える主人公の健気さが胸を打つ。
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posted at 10:10:08
岬鷺宮「三角の距離は限りないゼロ8」読了。二重人格の終わり。それは「秋玻」と「春珂」、どちらかの人格の消滅を意味していた。いよいよ境界を失いつつある二人と僕は彼女のルーツを探る旅へと出る。その果てに明らかになる二重人格の真実とは? そして僕らが見つけた『答え』とは?
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そしてその賑やかな物語のいいアクセントとして機能しているのが様々な恋の鞘当てであり、それが更なる事件の火種になりそうな気配をひしひしと感じさせてくれる。また主人公であるモニカの人間としての成長が好ましい反面、逆にモニカの弱点となってくる点は何とも悩ましいものがある。
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気弱で臆病だけど最強の引きこもり天才魔女が正体を隠し王子に迫る悪を密かに裁く学園ファンタジーシリーズの四作目は学園祭編。本作について作者は「沢山の登場人物がワイワイしている、お祭り騒ぎみたいに賑やかなお話が好きです」と語っているが、本作はその言葉通りの内容に仕上がっている。
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依空まつり「サイレント・ウィッチIV 沈黙の魔女の隠しごと」読了。第二王子のお披露目のため強行された学園祭当日の朝、七賢人〈深淵の呪術師〉から学園に呪具が紛れ込んだと報せが舞い込む。殿下の護衛、呪具の回収、正体の秘匿――果たしてモニカは学園祭を無事に乗り切ることはできるのか?
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2022年08月08日(月)
「インシディアス」「インシディアス第2章」観了。「ソウ」の監督&脚本家コンビによる心霊ホラー。一作目だけでもホラーとして観れなくもないが「第2章」は言うなれば一作目の解決編であり、一作目で起きた怪現象が絶妙な伏線として回収されていく過程が実に秀逸。やはり二作で一つの作品だと思う。
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2022年08月06日(土)
「劇場版『Gのレコンギスタ Ⅴ』「死線を越えて」」観了。五部作完結。戦闘はひたすら熱いがその戦闘に絡めて描かれる愛憎劇がいいアクセントになっていて○。またマスクも大概だがマニィも言ってることが最初と最後で変わりすぎである意味お似合いのカップルだと思う。とりあえず最後まで面白かった。
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「ONE PIECE FILM RED」観了。予告編から何となく予感はしていたけれど思った以上に○クロスでなぜか○どマギだった(あと最後の戦闘が完全にRPGのラスボス戦)。ワンピース知識が全くない自分としてはそれなりに楽しめたものの、それでもここまで自由にやってファンは怒らないのかと思ってしまった。
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2022年07月28日(木)
作者はあとがきで『〈理〉に満ちた話が好きです。(中略)〈理〉によってのみ動く人々、つまり〈情〉のない人しか出てこないミステリというのはどうだろう。そう思って考えたのが「情無」の基本設定』と語っているが本作はその「〈理〉によってのみ動く人々」が織り成す異形の構図が強烈な秀作である。
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また事件の不可能状況もなかなか魅力的で、特に第一の事件は綾辻行人の某作を思い出す人もいるかもしれない。尤も真相に関してはハウダニットだけ見ればよくあるものながら、特筆すべきは本作ならではの設定と絡めたことで秀逸なホワイダニットとしての意外性を生み出すことに成功している点だろう。
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あらゆる欲求を失い怒りも悲しみも感じない「情無」達が集う屋敷で起きた連続殺人を扱った長編ミステリ。本作は「情無」の設定もさることながら主人公が探偵役を務めることになる理由や「情無」達の中にいる犯人の設定が非常にユニークで、そこだけでも本作が極めて個性的な作品であることが窺える。
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浅ノ宮遼/眞庵「情無連盟の殺人」読了。徐々に感情が失われていく病「アエルズ」に罹患した元麻酔科医・伝城英二はある日、アエルズ患者八名が共同生活を送る〈情無連盟〉から加入の誘いを受ける。だが英二が彼らの住む屋敷を訪れていた最中、連盟員の一人が半密室状況下で殺害されてしまい……。
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posted at 20:02:50
とはいえ一応交換殺人を活かした仕掛けは用意されているもののそれ自体は前例があるものだし、何より問題なのは意外な展開を意識するあまりどんでん返しをする度に偶然の多用と人物の描写不足で説得力に乏しくなるプロットだろう。
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posted at 11:35:40
交換殺人の依頼状を機に始まる奇妙な往復書簡の顛末を描いた長編ミステリ。最初に断っておくと本作のメインは交換殺人ではなくどちらかというと交換殺人計画に関わるようになった男女の背景を描くことにあるため交換殺人目当てに読むといつまで経っても始まらないので肩透かしを覚えるかもしれない。
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posted at 11:35:24
天祢涼「拝啓 交換殺人の候」読了。パワハラのトラウマで退職から半年が過ぎても社会復帰できない秀文は首を吊ろうとした桜の木の洞に白い封筒が差し込まれているのを見つける。封筒を開けてみると、中身は交換殺人の依頼状だった。それを機に始まる奇妙な往復書簡。その先に待つ殺人計画の行方は?
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posted at 11:35:12